土地建物一括譲渡における契約書価額の価格比率を否認(東京地裁)

東京地裁は令和5年5月25日判決で、土地と建物の一括譲渡に関し、売買契約書に記載された価格比率が、建物へのリフォームを適切に反映していないと考え、これが不合理であると判断し、このような価格設定に対する課税処分を適法とする判決を下しました。

本件は、土地と建物の一括譲渡に関する売買契約で、土地と建物の代価が合理的に区分されていないとして時価の比率で按分すべきかが争われた事案です。原告は、中古住宅を仕入れ、修繕やリフォームを行って販売するビジネスを展開しており、物件販売時の消費税額を戸建住宅の場合には売買代金総額に2.7%、集合住宅の場合には5.4%を乗じた金額としていました。これに対し、東京地裁は原告の課税標準の算定方法は恣意的であり、それぞれの本来的な価値の比率や仕入れ時の対価の比率等を考慮すべきと指摘しました。また、リフォームにより建物の価値を高めているにも関わらず、その価値が建物の対価に適切に反映されていないとし、課税資産である建物の対価が非課税資産である土地の対価に比べて過小に区分されていると述べました。その結果、一括譲渡に関する消費税の課税標準は、法令に基づいて算定されるべきと判断されました。また、国の算出方法に基づく各物件の価額の算出が適法と結論付けられました。本事例は、合意した比率が必ずしも認められるわけではないことを示す重要なケースであると言えます。